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「15歳のとき、私は何をしていただろう」。沖縄テレビ放送・平良いずみディレクターの『菜の花の沖縄日記』の書評を紹介します

「15歳のとき、私は何をしていただろう」。沖縄テレビ放送・平良いずみディレクターの『菜の花の沖縄日記』の書評を紹介します

平良いずみさんは、沖縄テレビ報道部のディレクター。2020年に全国で公開されるドキュメンアリー「ちむぐりさ 菜の花の沖縄日記」の監督です。もともとは45分のドキュメンタリー番組でしたが、全国の人たちにみてもらいたいと、106分の劇場版が完成しました。なお、このテレビドキュメンタリー番組は、「『地方の時代』映像祭2018年」のグランプリを受賞しています。沖縄は那覇市の桜坂劇場で2月から、東京では中野区のポレポレ東中野で4月から公開します。

その平良さんが、菜の花さんが卒業したフリースクール「珊瑚舎スコーレ」の『学校をつくろう!通信』132号に、『菜の花の沖縄日記』の書評を書いてくださいました。平良さんが菜の花さんの文章のどこにひかれてドキュメンタリーをとろうと考えたのかがよくわかるとてもいい文章なので、平良さんと珊瑚舎さんの許可を得て、掲載します。


2019年2月23日、沖縄の辺野古基地建設を問う県民投票前日、菜の花さんを取材する平良さん。

 

「15歳の時、自分は何をしていたのか」と、この本「菜の花の沖縄日記」を読み終えた後、自身に問いかけ、ウチアタイ(恥ずかしくなって反省)したのは私だけではないだろう。

北国から、15歳でひとり、沖縄へ。自分の望む学びを求めて、著者である坂本菜の花さんは珊瑚舎スコーレに進学することを選んだ。そして、全く知らない土地を彼女は自分の足で歩き、多くの人と出会っていく。その経験を通して感じたこと、考えたことを3年間綴った日記(北陸中日新聞に連載)が、この書である。彼女が紡ぐ素直で、真っ直ぐな言葉たちは、驚くほどストレートに胸に届く。

最初に私が心を揺さぶられたのは、2016年に県内で起きた米軍属による女性暴行殺害事件を受けて書かれた「なぜ、繰り返されるの?」。この中で彼女は、こう記している。

「取り返しのつかない悲しいことが、また沖縄に起きてしまいました。本土では今回起こった事件がどう受け止められているのでしょうか。(辺野古への新基地建設に対する)抗議活動が大きくなる「恐れ」。最悪なタイミング。使われる言葉一つひとつが私の喉に刺さって抜けません」。

当時16歳の菜の花さんが県外の読者に沖縄の現状を伝えたいと発信した言葉に涙がにじんだ。閉塞感漂う沖縄にあって、前を向いて声を上げる菜の花さんの存在は人々の“希望”になると思い、ドキュメンタリー番組の取材を依頼、菜の花さんとの共同作業が始まった。オスプレイが墜落した浜辺へ、新基地建設が進む辺野古へ…、菜の花さんが行きたいと望む場所へ向かった。行く先々で、彼女の澄み切った瞳を前に地元の人達が本音を話してくれた。

米軍ヘリが炎上した牧草地を所有する西銘さん夫妻を訪ねた時のこと、妻の美恵子さんは「父は、あのヘリに乗っていた米兵たちは大丈夫だったかねと、こればかり心配していた」と語った。この話を聴いた菜の花さんが綴ったのが以下の文章である。

「事故後、西銘さんは“ウチナーンチュ”だねと言われたという。出身、立場、知り合った時間に関係なく、同じ人間として見る。“ウチナーンチュ”にはそういう意味が込められていたのかな。そう思うとすぐ、それにつけ込んでいる私を含む“ヤマトンチュ(本土の人)”が現れる。ずっと潜在的に差別し虐げてきている現実が、事故のたびに浮かび上がる」

これを読んだ時、胸が痛んだ。10代の少女にこんなにも加害の意識を背負わせてしまっていることに、そして、ウチナーンチュとヤマトンチュという言葉を使わなければならない現実に……。

 


米軍ヘリが落ちて炎上した西銘晃さんの牧草地で。

 

本来、ドキュメンタリーは出身地やイデオロギーが違っても人の体温は同じだということを伝えるためにあるべきだと思っている。故に、沖縄と本土という線を引く言葉は使いたくない。けれど、それを用いなければ沖縄の人々の尊厳が傷つけられるところまできている、そのことに菜の花さんは気づき、両者の溝を埋めるために表現してくれたのではないかという思いに至り、番組の核心としてお伝えすることにした。ほかにもこの書には、分断が進む社会にあって、希望となる言葉が散りばめられている。

閑話休題。冒頭で書いた「15歳の時、何をしていたか?」という問い、私自身はお恥ずかしながら、ボーっと生きていました……。それでも優しく包み込んでくれた社会へ少しでも恩返しができるよう、今、菜の花さんの言葉のチカラをかりて沖縄の現状を伝えるべく「菜の花の沖縄日記」劇場版を制作中です。来年2月県内先行上映、4月から全国順次公開となります。ぜひ、銀幕の菜の花さんに会いに劇場にも足をお運びください!