時をかける台湾Y字路記憶のワンダーランドへようこそ
栖来ひかり
忘れられた台湾の歳月を拾う。
右に行こうか、左に行こか ──まるで人生の岐路を象徴するようなY字路。
選択の末、10年前に台北に移住した著者は、
台湾のあちらこちらで出会うY字路の魅力にとりつかれ、
Y字路形成の理由や歴史を調べはじめた。
すると、原住民族が暮らしていたころから
清代、日本時代、戒厳令時代、そして現代に至るまで、
Y字路にはそれぞれの時代の出来事や人々の息吹が
地層のように積み重なっていることがわかってきた。
実際に現地を訪ね歩き、古地図と重ね合わせ、
資料をくりながら、忘れられた記憶と物語に耳を傾ける。
著者が訪れた百数十カ所のY字路の中から、
特に魅力的な約50カ所のY字路を、
写真や古地図をふんだんに使いながら紹介する。
●目次
まえがき
Ⅰ 台北、Y字路さがし。
1 Y字路さがし時間旅行──同安街とN記者
旅のはじまり
夢のY字路
ファーストY字路
「踏切り感」のY字路
「紀州庵」の川遊び
〔道草Y字路〕瑠公とY字路
2 水の旅──最古の水路・霧裡薛圳を辿って
ぶちぬき屋根のY字路
ビオトープY字路
ヤンヤンのY字路
泰順公園のY字路
3 タイムカプセル、ひらく─南昌路をあるく
地球儀のみえるY字路
南菜園のY字路
4 石とY字路とわたし─「辺界」に出会う
石隠れのY字路
境界Y字路
オアシスY字路
5 味覚の記憶地図──師範大学から永康街へ
死体拾いのY字路
連雲街のY字路
〔道草Y字路〕アメリカ西海岸なY字路
6 忘却のタイムスリップ──わすれ形見のY字路
老街入り口のY字路
凶悪事件現場のY字路
7 台北の下を水は流れ──安和路をめぐる旅
橋を渡るY字路
誠品書店裏のY字路
上埤頭の神さまY字路
象のY字路
〔道草Y字路〕Forgotten Time:被遺忘的Y字路
8 北門ちゃん──都市計画のY字路
「北門ちゃん」のY字路
夜更けに濡れるY字路
9 艋舺の動く城──台北下町物語
動く城なY字路
皮を剥いだY字路
萬華林宅のあるY字路
違法増築のY字路
市場前のY字路
北斗七星のY字路
〔道草Y字路〕高橋才治郎の梵鐘
10 風水なY字路──台北府城いまむかし
風刺漫画家のいたY字路
電影街のY字路
台湾一有名なY字路
11 カフェー桃源──女たちのY字路
民族運動のY字路
赤線地帯のY字路
処刑場のY字路
〔道草Y字路〕下奎府町のY字路
12 描かれたY字路──台湾アイデンティティを探して
「小故宮」と呼ばれた骨董店
台湾アイデンティティの模索
「台湾には文化がない」
〔道草Y字路〕名前のない通りにいます。
Ⅱ 台湾、Y字路ところどころ。
1 Y字路の部屋貸します。──新荘
2 福和橋のフリーマーケット──永和
3 板橋に、お城?──板橋
4 戯夢人生──三芝
5 Y字路のあたまとしっぽ──三峡
6 台湾の見世物小屋・日本の見世物小屋──内湾
7 台南一の肉まん──台南
8 ラブのリバー──高雄
あとがき
著者について
すみき・ひかり文・イラストレーション
文筆家・道草者。1976年うまれ、山口県出身。京都市立芸術大学美術学部卒、2006年より台湾在住。台湾に暮らす日々、旅のごとく、新鮮なまなざしを持って失われていく風景や忘れられた記憶を見つめ、重層的な台湾の魅力をつたえる。著書に『在台灣尋找Y字路/台湾、Y字路さがし。』(玉山社、2017年)、『山口、西京都的古城之美:走入日本與台灣交錯的時空之旅』(幸福文化、2018年)、『台湾と山口をつなぐ旅』(西日本出版社、2018年)、挿絵やイラストも手掛ける。
時をかける台湾Y字路 記憶のワンダーランドへようこそ
栖来ひかり
装丁:國枝達也
2019年10月31日・刊 定価:1,700円+税 248ページ ISBN: 978-4-909753-05-2 四六判・並製