都市の緑は誰のものか人文学から再開発を問う
太田和彦/吉永明弘(編著)
都市の再開発が見ようとしない「かけがえのない」ものに光をあて、都市の自然、人々との関わりを考える。
神宮外苑再開発をはじめ各所で進む都市の再開発。反対の声があがっているが、開発する側は市民や専門家からの意見に耳を傾けず、進める姿勢を崩そうとしない。このまま都市は経済優先の論理で開発されていくだけなのか。そんな現状に対して、歴史学、倫理学、地理学、美学など人文学の研究者がそれぞれの分野から考察。関係的価値、グリーンインフラ、将来世代への責任、マルチスピーシーズなどのキーワードを軸に都市の再開発のあり方や進め方について論じる。都市計画や環境問題に関心のある方はもちろん、自分の住む街のこれからを考えたい方にもぜひ読んでいただきたい一冊。
- Ⅰ 神宮外苑再開発を問う
第1章 場所の記憶から照射するジェントリフィケーション ● 北條勝貴
第2章 人と深い関わりのある自然の保全の理念はどうあるべきか――自然の関係的価値の視点からの神宮「外苑」問題 ●鬼頭秀一
第3章 都市における自然の価値――「機能的価値」と「関係的価値」の視点から ●吉永明弘
Ⅱ 持続可能な都市をめざして
第4章 都市の生きた遺産としてのグリーンインフラ ●太田和彦
第5章 ヨーロッパの持続可能な都市の輪郭 ――気候変動への対応、スクラップ&ビルドしない再開発 ●穂鷹知美
第6章 すべての生き物のためにデザインされた共存共栄都市へ――マルチスピーシーズ都市とはなにか ●ルブレヒト・クリストフ
第7章 将来世代にどのような都市を残すか――杜の都・仙台の実践 ●吉永 明弘
Ⅲ 美学と詩学から人と環境との関わりを考える
第8章 生活の時間と公園の時間――都市における自然がもつ美的意義 ●青田麻未
第9章 場所や自然とどのような関係をもつべきか――生態地域主義と環境詩学の視点から ●高橋綾子
終章 より多くの人が都市を故郷と呼ぶ時代に向けて ●太田和彦
著者について
太田和彦(おおた・かずひこ)南山大学総合政策学部准教授。東京農工大学連合農学研究科修了。博士(農学)。専門は環境倫理学、食農倫理学、シリアスゲーム。翻訳書に『〈土〉という精神』(ポール・B・トンプソン、農林統計出版、2017年)、『食農倫理学の長い旅』(ポール・B・トンプソン、勁草書房、2021年)、『LIMITS』(ヨルゴス・カリス 、大月書店、2022年)がある。アジア太平洋圏食農倫理会議、第4回オンライン大会、第5回名古屋大会主催。
吉永明弘(よしなが・あきひろ)
法政大学人間環境学部教授。千葉大学大学院社会文化科学研究科修了。博士(学術)。専門は環境倫理学。著書に『都市の環境倫理』(勁草書房、2014年)、『ブックガイド環境倫理』(勁草書房、2017年)、 『はじめて学ぶ環境倫理』(ちくまプリマー新書、2021年)、編著に『未来の環境倫理学』(勁草書房、2018年)、『環境倫理学(3STEPシリーズ)』(昭和堂、2020年)、 『技術哲学(3STEPシリーズ)』(昭和堂、2024年)がある。
都市の緑は誰のものか 人文学から再開発を問う
太田和彦/吉永明弘(編著)
装丁:末吉亮(図工ファイブ)
2024年9月15日・刊 定価:2,800円+税 300ページ ISBN: 978-4-909753-19-9 並製